はじめに
みなさんこんにちは!”いと(@StudyRoad)”です!
今回は物理から「二つの物体のエネルギー保存」を扱った問題を解説していきたいと思います。
この問題は物理の問題の中でも特に「運動をイメージする力」を必要とする問題です。(この力については下の参考記事で詳しく述べています。)
物理を得意にするためには必須の「運動をイメージする力」を身につけるためにも、今回の解説をぜひ最後まで読んで頂ければと思います。
問題文
質量mの小球Pと3mの小物体Qを糸で結び、Qを傾角30°の斜面上の点Aに置き、糸を斜面と平行にし、滑車にかけてPをつるす。斜面は点Aの上側では滑らかであるが、下側は粗く、 Qとの間の動摩擦係数は1/√3である。Pに鉛直下向きの初速voを与えたところ、Qもvoで点Aから動き出した。重力加速度をg とし、エネルギー保存則を用いて答えよ。
⑴Qの達する最高点Bと点Aとの距離lはいくらか。
⑵Qはやがて下へ滑り点Cで止まった。AC間の距離Lはいくらか。
解説
⑴Qの達する最高点Bと点Aとの距離lはいくらか。
⑴から解説していきますが、まずは問題を解くのに必要な「運動のイメージ」をしていきます!
運動のイメージ
まず、Qが最高点に到達した時、Qの速度はどうなるでしょう?
ここに関してはブランコを想像してみてください。ブランコで最高点に達した時の速度はどうなるでしょうか。
もちろん0ですよね。当たり前すぎることですが、このようなイメージが物理では大切になってきます。
このタイミング!!
続いてPはどうなっているでしょうか。今回PとQは糸で結ばれています。糸はバネとは違って伸びません。
ということは、Qが止まればPも止まります。また、この時Pは最下点にあると言えます。つまり、
Qが最高点Bに到達→Qは停止→糸は伸びないからPも停止→Pは最下点にある。
この流れを頭の中で描けるかがポイントになります!
解答
問題文から、初期状態(はじめ)とQが最高点に到達した状態(あと)の間で力学的エネルギー保存則を使うことまではわかると思います。
また点Aから点Bの距離がlであり、糸は伸びないわけですから、Pの落下距離もlですよね。
この後、ここまでのイメージを用いて力学的エネルギー保存則を立てるわけですが、ここで一つ皆さんに意識しておいてもらいたいことがあります。それは、
二つ以上の物体の位置エネルギーを考えるとき、基準点はそれぞれに個別でとって良い。
位置エネルギーを考えるときは、これを意識しながら、考えやすい場所に基準点をおいて位置エネルギーを考えることが大切になってきます!
ということで物体の推移を図にしてみたのでご覧ください!(実際はこんなカラフルには書くことはできませんので最低限の図がかければ十分です。)
ここまで分かればもう解けたも同然です。
実際に力学的エネルギー保存則の式を作ってみます!
1/2mvo2+1/2・3mvo2+mgl=3m・glsin30°
私はQに関しては初期位置の点Aを基準とし、Pに関しては最下点を基準にしました。(私は各物体の最下点を基準にとっています。そのほうがごちゃごちゃになりにくいと思います。)
これを計算すると、
l=4vo2/g と求めることができます!
⑵Qはやがて下へ滑り点Cで止まった。AC間の距離Lはいくらか。
摩擦力の負の仕事→摩擦熱の発生
この問題では摩擦を考慮する必要が出てきます。
一般的に摩擦力が出てきたときには「摩擦力が負の仕事をする」ということを利用して問題を解くことになりますが、なんだかわかりにくくありませんか?
負の仕事とは力の働く向きと移動が逆になっているときの仕事のことを指しているのですが、なんだか理解しにくいです。
ですのでここで考え方を変えて、摩擦熱が発生したと考えることがオススメです!
(「勝手に考え方を変えていいのか」と思うかもしれませんが、結局、摩擦力が負の仕事をしたことで得たエネルギーで摩擦熱が発生しているので、言ってしまえば同じことなのです。)
ここではまず
摩擦熱=動摩擦力×滑った距離
だけ覚えておいてください!この摩擦熱の便利さは後々わかると思います。
解説STEP1:点Aに戻ったときの物体の速度は?
Qははじめ点Aにありました。その後⑴で点Bで静止しました。そしてこの⑵では点B→点Cを考えるわけですが、摩擦が発生するのは点Aの下側のみです。
摩擦熱を考える上で、途中から摩擦熱が発生するような2点で保存式を立てるのは賢明ではありません。式が複雑になってしまい、ミスを誘発してしまいます。
ではどうするのか?勘の良い人ならもうわかったと思いますが、点Bがダメなら点Aしかありませんよね。
実はQが点Bから点Aに戻ったとき、物体は初期状態と同じ位置にあり、外力は加えられていませんので、速さも初期状態と同じvoになるのです。
しかし、向きは逆ですよ。点Bから点Cに向かっているのですから当たり前ですよね。
解説STEP2:立式
STEP1でQが点Aに戻ったときと点Cに到着したときで式を立てるべきということを説明しました。
しかし、ここで勘違いしないでいただきたいのが、
Qが点Aに戻ったときと点Cに到着したときでは力学的エネルギーは保存していない
ということです。
なぜなら、摩擦熱が発生しているからですね。ということでこれから立てる式は、
(Qが点Aでの全体の力・エネ)=(Qが点Cでの全体の力・エネ)+(発生した摩擦熱)
になります。では立式してみましょう。(ここでも⑴と同様P、Qが静止していることをイメージしましょう。)
1/2mvo2+1/2・3mvo2+3m・gLsin30°=mgL+1/√3・3mgcos30°・L
(摩擦熱は1/√3・3mgcos30°・Lです。(動摩擦力)=1/√3・3mgcos30、(滑った距離)=L)
今回も各物体の最下点を基準とした位置エネルギーを考えています。
これを解けば、無事解答である、2vo2/gが求められます!!
最後に
ということで、今回のポイントは二物体間の保存力の扱い方と摩擦熱の考え方でした。ちなみに摩擦熱の考え方は普通の参考書ではあまり見ませんが、「良問の風」や「名問の森」には書いてあるのでよかったら参考にしてみてください!
では最後までご覧いただきありがとうございました!
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