はじめに
みなさんこんにちは。いと(@StudyRoad)です。
今回は大学の実験で取り扱うことも多い「シクロデキストリンの包接反応」に関する記事です。
まずは、シクロデキストリンの構造から、どうして包接(分子の取り込み)が起こるのかを説明します。
そのあと、大学の実験でしばしば取り扱う「フェノールフタレインの取り込み」のポイントを押さえます。
そして、最後に、実は我々の身の回りに多く存在する「包接」の実例を見ていきたいと思います。
これから、大学などでこの実験をする方の参考になるように書いて行きたいと思いますので、レポート作成に活用していただければと思います。
シクロデキストリンの構造
シクロデキストリンには3種類(α、β、γ)あり、いずれもブドウ糖(グルコース)が環状に結合したものなのですが、結合しているブドウ糖の数が異なります。
実は、今回扱う「分子の取り込み(包接)」が可能なのはβ-シクロデキストリンだけなのです。その理由については後ほど書いていきます。
では、そのβ-シクロデキストリンの構造式を見てみましょう。
これです。
構造式を見ただけでは何が何だかわかりませんね…(立体に書かれていませんのでね。)
このままでは何もわかりませんので、今度はβ-シクロデキストリンの立体的な模式図を見てみましょう。
こちら。
そう。このβ-シクロデキストリンは立体的には、底抜けのコップのような構造をしているのです。このスペースに他の分子を取り組むことこそが”包接”なのです。
しかし、それだけでは一度分子を取り込むことが出来ても、すぐに抜けてしまいそうですよね。
ここで、画像中の親油性と親和性という言葉がポイントになってきます。
詳しく見ていきましょう。
包接のメカニズム
先ほどのβ-シクロデキストリンの模式図をもう一度見てみます。
これを見ると、内側が親油性(疎水性とも言う)で外側が親水性であることがわかります。
語句の意味を簡単に説明すると、親油性(疎水性)とは水に溶けにくい性質で、親水性とは水に溶けやすい性質のことです。
また、疎水性物質同士や親水性物質同士は結びつきやすいという性質もあります。
β-シクロデキストリンの内側は親油性でした。ということは同様に水に溶けない親油性の物質を内側に留めておくことができるのです。
親油性(疎水性)物質を水に溶かすことができる
また、β-デキストリンの外側は親水性ですので、親油性の物質を取り込んだ状態で水に溶けることができる。つまり、普通では水に溶けない物質を水に溶かすことができるのです。
α,γが包接出来ない理由
まず、シクロデキストリンのα,β,γの違いは繋がったブドウ糖の数です。
αは6個、βは7個、γは8個です。
ということは、上で示したカップの大きさに違いが出てきます。
αのコップは小さくなり、内側に他の分子を取り込むスペースが十分にありません。
また、γのコップは大きすぎて、分子を一度取り込んでもすぐに出て行ってしまいます。ユルユルなんです。
この辺は大学の実験でやる人も多いと思います。
フェノールフタレインを取り込ませる実験
フェノールフタレインは中学校や高校の授業で聞いたことがある人が多いと思います。
塩基性(アルカリ性)条件下で赤紫を呈色するアレです。実はこのフェノールフタレインは疎水性(親油性)なのです。
この溶液と、β-シクロデキストリンを混ぜると、面白い反応が起きます。
なんと塩基性のままでも、フェノールフタレインの赤紫色が消えてしまうのです。
これは、フェノールフタレインがβ-シクロデキストリンに取り込まれることに起因します。
詳しくは取り扱いませんが、包接によって、フェノールフタレインの構造に変化が起きて、呈色がなくなってしまうのです。
これはβ-シクロデキストリンの分子の取り込みを目で見ることができることから、実験でよく扱われる反応です。
もう少し先へ
この後、より疎水性の高い物質をこの無色になってしまった溶液に加えて見るとしましょう。
すると、今度はさっき消えたはずの赤紫が戻ってきます。
これは、β-シクロデキストリンとフェノールフタレインの反応が可逆的であることを示す結果でもあります。
簡単に言えば、より疎水性が高い物質を加えたことで、そっちが優先的に取り込まれてしまい、フェノールフタレインが追い出されているということです。
包接の実用例
これまで解説してきた”包接”には多くの効果があります。
安定化・・・熱や紫外線、酸化などに弱い不安定な物質を包接することで、安定化させます。保存性が高まることなどから食品に使われることもあります。
生体内反応への影響・・・知っている方も多いであろうCo(コエンザイム)Q10にも包接は利用されており、体の中での吸収を促進させています。
マスキング・・・苦味や渋みを持つ成分などを包接することで、苦味や渋みを抑制します。ペットボトルの紅茶などにも使用されています。成分表には環状オリゴ糖と記載されることがほとんどです。
可溶化・・・上で詳しく解説した、疎水性物質を水に溶けさせることができることを利用して、様々な研究で用いられています。
最後に
今回は、シクロデキストリンの持つ”包接”という反応について書いてきました。
皆さんの参考になれば幸いです。
では。
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