はじめに
今回は数学者の新井紀子さんが著者である『AI vs 教科書が読めない子どもたち』という本の要点をまとめていきたいと思います。
前回は堀江貴文さん・落合陽一さん共著の『10年後の仕事図鑑』について書きましたが、今回紹介する本もAIによる社会の変化を題材にしている点では共通しているので、『10年後の仕事図鑑』と本書の比較も含めて書いていこうと思います!
(こちらが『10年後の仕事図鑑』のレビュー まだ読んでいない人はぜひ!)
要点まとめ
それでは要点をまとめていきます!
第1章 MARCHに合格〜AIはライバル〜
本書を通して、著者の新井紀子さんは『AIには限界がある』ことを念頭に置いて議論を進めています。SF映画のようにAIが人間と同じように自分で考えて、行動を起こしたり、危険な思想を持ち始めたり、などということは近未来では起こりえないという姿勢です。
これは、新井さんが数学者としてAI技術の最前線で戦っているからこそ、『現時点ではコンピューターがしているのは計算(四則演算)にすぎない』ことを理解しており、真のAIを生み出すためには必要不可欠な人間の知能を全て数学的に解明することの難しさを実感しているからでしょう。
この第1章では、このような著者のAIに対する基本的な考え方に加えて、海外のAI技術である”ワトソン”や”YOLO”の衝撃的な働きの技術的な解説、また著者が”東ロボくん”を作ったきっかけ・目的などが詳細に記述してあります。
ここで簡単に”ワトソン”と”YOLO”についてまとめておきます。
ワトソン・・・アメリカのIBM社が開発したAIで、アメリカの人気クイズ番組である”ジョパディ!”でクイズ王に勝利したことで一躍有名に。原理としては音声分析と自動検索によって回答を探すため、Siriに近いと言える。
YOLO・・・ワシントン大学の大学院生である、ジョセフ・レドモンが開発し、2017年に発表されたリアルタイム物体検出システムの名称で、You only look once の略。動画で見るとわかりやすいと思います。
第2章 桜散る〜シンギュラリティはSF〜
この章では、”東ロボくん”プロジェクトの困難を通して、著者が感じた、AIの限界やそれに伴うシンギュラリティの実現不可能な理由が述べられています。
ちなみに、シンギュラリティとは直訳すると「特異点」という意味で、今回のようなAI技術の議論中で出てくる場合には「技術的特異点」つまりは、AIが人間の能力を超える地点という意味で使われる言葉です。
この章の中に”Siriは賢者か?”という話があるのですが、その中で面白いなと思った1つの話を紹介したいと思います。簡単に試せるので、皆さんもやってみてください。3STEPあります。
①Siriに”この近くの美味しいイタリア料理のお店は?”と聞いてみてください。
②次に”この近くのまずいイタリア料理のお店は?”と聞いてください。
③最後に”この近くのイタリア料理以外のお店は?と聞いてください
不思議なことにこの①〜③の質問に対するSiriの回答は全て同じで、現在地の近くの評価の高いイタリア料理店が紹介されてしまいます。
これは”美味しい”という言葉に比べて、”まずい””以外の”という言葉の使用率が低いため、Siriがこれらの言葉を無視した検索結果を教えてしまうことが原因のようです。
この例は、身近な人工知能として都市伝説の題になることもあるSiriでさえも、人間のように言葉の意味が理解できているわけではないことを簡単に知ることができる例としてあげられています。
第3章 教科書が読めない〜全国読解力調査〜
この章では、AIの登場によって人間の仕事として残る仕事には読解力が必要になってくる今後の社会において、必要な読解力を持つ中高生が減っているのではないかという著者の考えから始まった”リーディングスキルテスト”の目的と結果が書かれています。
ここでも1題だけ紹介してみます。
以下の文を読んで問題に答えてください。
アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。
問:この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから一つ選びなさい。
セルロースは( )と形が違う。
①デンプン ②アミラーゼ ③グルコース ④酵素
簡単すぎると感じた方もいるかもしれませんが、これは”リーディングスキルテスト”の中では難易度がとても高いほうであるそうです。
ちなみに答えは①のデンプンですね。しっかりした大人であっても③のグルコースと答えてしまう誤答が多いそうです。
このような問題からなるテストを製作し、全国2万5000人の中高生にテストを解いてもらい得た結果から、著者の方が感じたことがこの章に書かれています。
簡単にいえば、非常に悲惨であり、早期に何か手を打たなければ日本はAIによる仕事の代替が進んでいくであろう社会において最悪のシナリオを迎えることになってしまうと感じたようです。この最悪のシナリオについてが最終章に書かれています。
第4章 最悪のシナリオ
AIが普及した近未来の社会で生き残っていくためには、AIができないことをできることが条件になってきます。なぜならAIが出来ることで勝負した場合、圧倒的にAIの方が正確性、スピードともに上になってしまうからです。
人間にあって、AIにはしばらくはないものの代表例が”読解力”です。しかし、前章で書いてあった通り現在の中高生の読解力は壊滅的とも言えるレベルです。これらの中高生のことを著者は”教科書が読めない子どもたち”と総称し、自身の研究成果である”東ロボくん”というフレーズをさしおいて、タイトルに使用したのです。
ここには、著者が現状を非常なものと捉えていることが顕著に現れていると思います。この状況が続いてしまえば、”AIの登場によって21世紀最大の世界的不況の”AI恐慌”が起こるでしょう”とまで著者は述べています。
10年後の仕事図鑑(落合陽一,堀江貴文)との比較
本書で、新井紀子さんは最終章にAI社会における仕事(職業)について、こう述べています。
重要なのは柔軟になることです。人間らしく、そして生き物らしく柔軟になる。そしてAIが得意な暗記や計算に逃げずに、意味を考えることです。
一方、「10年後の仕事図鑑の中」で落合陽一さんは、
「なにをやるかが決まっていない状況」では、人間は機械に十分に勝つことができる。なぜならコンピューターには「これがやりたい」という動機がない。
また、堀江貴文さんは、
自分のオリジナリティや個性を磨いていくことが未来の仕事を作る上で重要なことになるだろう。
と、述べています。
3人が考える、今後の社会で生き抜くために必要な要素は本質的には同じなのかもしれないですね。これまでの常識に囚われず、自分の考えで、生き方を考えていくことが大切なんですね。
最後に
ということで、今回は”AI vs 教科書が読めない子どもたち”のレビューをしてみました。
私自身、この本を読んで、これからの社会への危機感を抱くだけでなく、自分には何ができるのだろうかと深く考えさせられました。
気になった方は是非読んでみてくださいね!最後までご覧いただきありがとうございました!
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