はじめに
みなさんこんにちは!”いと”です!
突然ですが、理系のみなさんは理想気体とは何かを正確に理解しているでしょうか?
まさかPV=nRTが現実の気体でも成り立つとは思っていませんよね?
「えっっっ!!」と思った方も大丈夫です。
今回の記事を読めば「理想気体とはなんなのか?」「実在気体となにが違うのか」などの疑問は解決します!
理想気体と実在気体の違いに関する問題は特に難関大では頻出ですので、しっかり最後まで読んでいただければと思います!
理想気体・実在気体の問題
今回、解説する問題はこちらです!(お茶の水女子大学の過去問の改訂版)
下図は、A~Dの4種類の各気体1molを0℃に保って、圧力Pを増加させていったときの体積Vを測定し、PV/RTの値とPとの関係を示したものである。このとき、Tは絶対温度、Rは気体定数を表す。この図を参考にして以下の問いに答えよ。
⑴理想気体に最も近い気体を記号で答えよ。
⑵気体B、C、DのPV/RTの値が圧力増加につれて減少する理由を述べよ。
⑶温度を上げると、A~Dの曲線はどのように変化するか。また、その理由を説明せよ。
どうでしょう。ぱっと見はなんだか難しそうに感じるかもしれません。
しかし、実は理想気体と実在気体の2つの違いを知っていれば案外簡単に解くことができる問題なのです!
理想気体と実在気体の2つの違いとは?
理想気体とはそもそも、物理・化学的な実験の中での計算において複雑な要因を無視して計算を明快に進めていくために作られたものです。
その無視したものこそが、理想気体と実在気体の違いになっています。その理想気体で無視しているものとは、
①分子間力
②分子自身の体積
の二つです。
①分子間力
まず分子間力とはその名の通り、分子と分子の間に働く引力のことです。詳しいことは大学でわかりますが、分子間力はその分子同士の距離(分子間距離)が小さければ小さいほど大きくなります。磁石の引力に似ていますね。
分子間力は引力ですので、気体の体積を理想気体の時と比べて減少させてしまう原因となります。
ここがポイントですので、ぜひ覚えておいてください!ただ温度と分子間力の関係については注意しなければなりません。詳しくは下の⑶の解答解説で。
②分子自身の体積
2つ目は分子自身の体積です。
上の図で言うところの、青と黄色の球の体積ですね。
分子自身の体積は非常に小さく、ほとんどが無視できる程度ですが、無視できなくなる時があります。
それは気体の体積が小さい時です。
なぜなら、分子自身の体積は変化しないためにその気体の体積の大小によって、分子自身の相対的な体積が変化し、気体の体積が小さい時に分子自身の体積は相対的に大きくなるためです。
よくわからない人向けに、分子を人間に例えると、
東京ドームでプロ野球の試合がやっていて大勢の野球ファンで埋められている時に、ドームの体積に占める人間の体積は無視できないくらい大きいですよね。
けど試合が終わりみんなが帰宅してから、地球に占める野球観戦に来てた人たちの体積を考えれば、同じ体積でも無視できる時とそうでない時があることがわかると思います。
とりあえずは気体の体積が小さい時には分子自身の体積が無視出来なくなるんだ、つまり気体の体積を理想気体の時に比べて大きくしてしまうんだ、ということだけ覚えておけば大丈夫です。
問題の解答解説
では実際に問題の解説をしていきます。問題中の図はこれでした。
⑴の解答解説
⑴理想気体に最も近い気体を記号で答えよ。という問題。
今回は1molの気体ですので、理想気体ならばPV/RT=nが成り立つので、圧力Pに関わらずPV/RTの値は1であるはずです。
ということで理想気体に一番近い気体は図から明らかにAですね。
⑵の解答解説
⑵気体B、C、DのPV/RTの値が圧力増加につれて減少する理由を述べよ。という問題です。
まず、問題文中に”0℃に保って”と書いてありますので、PV/RTの値が減少するということは、体積Vが圧力Pの増加以外の実在気体特有の原因で減少していることがわかります。
体積Vが減少する原因は、上で紹介した理想気体と実在気体の違いのうち①分子間力でしたね。
圧力Pの増加によって、体積Vは減少します。理想気体であれば常にPVは一定ですから反比例の関係になっています。
しかし、体積Vが小さくなったために分子間距離が小さくなり、分子間力が大きくなりその影響が無視出来ないほど大きくなり体積をより減少させてしまうのです。
解答としてまとめると、
実在気体では、圧力をあげて体積を小さくすると、分子間距離も小さくなって、分子間力がより強く働くようになるため。
となります!
⑶の解答解説
⑶温度を上げると、A~Dの曲線はどのように変化するか。また、その理由を説明せよ。という問題です。
曲線の変化を推測するためには、同じ圧力の時に温度を上げるとどうなるかを考えると良いですね。
理想気体では圧力一定で温度を上げるとT/Vは一定ですから、気体の体積は大きくなりますよね。もちろん、実在気体でも体積は大きくなります。
②の分子自身の体積の影響から考えてみると、気体の体積は大きくなるわけですから②分子自身の影響はほとんどなくなります。
①の分子間力については少し注意が必要です。
単純に考えれば、体積が大きくなるために分子間力の働きが弱くなる、ということだけで終わってしまいそうですよね。もちろんこれも正しいです。
しかし、もっと考慮しなければならないことがあります。それが上でも言っていた分子間力と温度の関係です!
今回の場合は温度が上がっていますよね。ということは分子の運動エネルギーが大きくなり、運動が活発になります。具体的には早い振動を繰り返しながら高速で飛び回っているのです。
すると、磁石の引力に似ている分子間力はさらに働きが弱くなってしまうのです。磁石のS極とN極も素早くすれ違わせるだけならあまり力が働きませんよね。
ということで①分子間力の影響も非常に小さくなってしまうのです。
結果的に①②の影響はどちらも小さくなるので、曲線は全体的に理想気体の値であるPV/RT=1に近づくと考えられます。
以上の考察をまとめて解答を作ります。
PV/RTの値は理想気体の値である1に近づく
(理由)同じ圧力のもとで、温度を高くすると気体の体積は大きくなり、分子自身の体積は気体の体積に比べて無視できるようになる。また、温度を高くすると気体分子の運動エネルギーが大きくなり、相対的に分子間力の影響が無視できるようになるから。
最後に
今回は少し難しい問題を扱ってみましたが、少しはみなさんの理解の役に立つことができたでしょうか?
最後までご覧いただきありがとうございました!
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